マルハナバチやチョウなどの長口吻送粉者の減少は植物群集にどのような影響を与えるのか?
近年、世界的にマルハナバチ類やチョウ類などの長い口吻をもつ送粉者が、人間活動などにより世界的に減少しています。一般に長口吻送粉者は長い花筒をもつ植物と相互作用しているといわれており、植物への影響が危惧されます。本研究では、長口吻送粉者が少ない伊豆諸島(海洋島)と本州の海浜植物群集を比較し、長口吻送粉者の不在が送粉ネットワークをどのように変化させ、植物の繁殖成功に影響を与えるのか調べました。その結果、長口吻送粉者の不在は、短口吻送粉者の長花筒植物への訪花を促進し、ネットワークレベルの花と昆虫の形態のミスマッチを起こすことが明らかになりました。また、形態のミスマッチに伴い、植物群集全般の送粉成功が低下することが示唆されました。
![]() 本州のハマヒルガオ |
![]() 伊豆諸島のハマヒルガオ |
![]() 本州のハマゴウ |
![]() 伊豆諸島のハマゴウ |
訪花昆虫を効果的に活用して、農作物の収量増加と安定化を目指す
多くの農作物は訪花昆虫による送粉サービス(花粉媒介)によって支えられています。しかし、訪花昆虫の活動は生息地の劣化や気温などの環境条件に左右されるため、農作物への訪花を安定化する技術の開発が求められています。そこで私は、農作物と訪花昆虫を誘引する植物を混植することで、野生送粉者の訪花頻度を高める技術の開発に取り組んでいます。
関連論文:人口増加・減少、農地の管理方法の変化、都市化、農薬使用などは生物多様にどのような影響を与えるのか?
都市化や農薬の使用など、人間活動は生物多様性の減少要因のひとつとされています。一方で、人の手が入らなければ生物多様性が高いと単純には言えず、管理放棄によって生物多様性が減少する事例も報告されています。私は群集生態学的な手法を用いて、人間活動の「増加」と「減少」の両側面から、生物多様性への影響を評価する研究に取り組んでいます。
関連論文:ディープラーニングによる自動同定・計数、インターバルカメラ、環境DNA、駆除されたスズメバチの巣を活用したモニタリング
多種多個体から構成される生物群集の調査は多大な労力を要します。そこで、ディープラーニングを用いて画像から自動同定・計数を行う技術の開発に取り組んでいます。また、環境DNAやメタバーコーディングなどの研究者と連携し、汲んだ水や駆除されたスズメバチの巣を活用した生物多様性モニタリング手法の検討にも取り組んでいます。
関連論文: